自炊探偵、あらわる。

The Adventures of Detective Gohan

鍋底に眠る黄金 イランの妙技『ターディグ』

 欧州に住むイランにルーツがある女性とSNSで繋がりがあるのだが、彼女が頻繁に投稿する米の料理がいつ見ても謎だった。ケーキのような形をしており、上から下に黄金色のグラデーションがかかっている。ハッシュタグを手掛かりにその料理の名を突き止めた。Tahdig、ターディグ、発音的にはターディーグというらしい。

 調べていくうちに、ペルシャ語で「鍋の底」を意味するこの料理を作ってみたくなった。イランの国民食であるがやや難易度が高く、うまく焼けたらお嫁さんになれるというジョークもあるそうだ。ははーん。突然現れた東洋の中年男がこれをやってのけたら、ちょっとおもしろいな。

【材料】

  • バスマティライス 1合
  • バター 大さじ1
  • オリーブオイル 大さじ1
  • サフラン 少々
  • 塩 大さじ2
  • ヨーグルト 大さじ2

【レシピ】

①バスマティライスをよく洗う。研ぐようにすると割れるので注意。ボウルに水を張りひとつまみの塩を入れ1時間ほど米をひたす。

②大きな鍋で湯を沸かし塩大さじ2を加え、米を5分茹でる。

③米をザルにあげ流水ですすぐ。味見し塩気が和らぐまですすいだらよく水をきる。

④水をきる間にサフランを大さじ1のぬるま湯で15分間戻す。

⑤だいたい1カップ分のライスにヨーグルト大さじ2、オリーブオイル大さじ1、戻したサフランウォーター、溶かしたバター大さじ1を加えよく混ぜる。

⑥鍋に残りのバターを入れ火をかけ溶かす。⑤のライスを均一に敷き詰める。ただし押し込まぬこと。

⑦ 残りの白い米を同じく上段に敷き詰める。箸で8箇所ほど通気孔を作る。鍋底までは貫通させない。

⑧蓋を布巾で包み、蓋をする。蒸気の水滴が米に落ちないようにするため必須。

⑨中火で7分、そのあと弱火にし、必ず10分ごとに鍋を1/4回転させ、合計40分火にかけ完成。

⑩蓋をとり、シリコンベラを鍋に沿って入れていく。皿の上でひっくり返しターディグを取り出す。

 あっけなくできてしまった。この料理にはテフロン加工派とダッチオーブン派がいるようだが、弱火でもしっかり火が入るダッチオーブンを選択した。米の扱い方が普段と違うので終始不安はあったが、工程自体は難しいものはなかった。

 こうして無事にSNSに投稿し、首尾よくその女性からもお褒めの言葉を賜ったのだが、おかずのことを忘れていた。咄嗟の思いつきでKFCに行きチキンを買い求めた。クリスピーで香り高いサフランライスとジューシーなチキンが想像以上に好相性で最高に美味かった。

自炊探偵の事件簿

 自炊とは推理することにあり。レシピ、伝聞、ひらめきなどを手掛かりに自分好みの味を追求しているとき、人はみな探偵になる。

 オリジナル料理、知られざる世界の料理、クックパッドに載せるまでもない料理……ユニークな視点で独自の情報発信を目指す炊事を推理する炊理ブログへようこそ!

 私の名は detective_gohan。訳すなら、名探偵ゴハンといったところか。なんだか恥ずかしいが、ブログを開設する際に名前を聞かれ、とっさに名乗ってしまったのだ。ちなみにアイコン画像は本人だが背景は合成である。妻とふたり、都会の片隅で暮らしている主夫だ。

 とにかく私はこの先、探偵趣味に溢れた奇妙で滑稽で高慢な自炊の記録を、事件簿として書き留めようと思う。時にレシピを書いたりもするが、必ずしも調理に興味がある方に向けたブログではない。食欲とともに満たされた知的好奇心をシェアすることこそが私の本懐だ。

 キャラ設定の都合上ハードボイルドな口調で失礼することをお許し願う。お付き合いいただけたら幸いである。