自炊探偵、あらわる。

The Adventures of Detective Gohan

昭和の神レシピ 白菜のあったか煮


 
 大寒を迎え、寒さ一層に厳しいこの時節、私にはちょくちょく作るメニューがある。現代の家庭料理の礎を築いた昭和の偉人、故・小林カツ代氏が考案した『白菜のあったか煮』だ。

 1989年刊の『小林カツ代のアッという間のおかず』に掲載され、以降『白菜とツナのあんかけ汁』『白菜とツナ缶のとろっと重ね煮』と名を変えつつ、1997年、2015年、2022年と3回もNHK『きょうの料理』で紹介されている。もはやレジェンド料理と呼ぶほかないだろう。

 料理の基本を広めただけでなく『時短料理』という概念を発明し、家事からの解放をも説いた氏のレシピは本当に簡単だ。

 メインの材料は以上。白菜は1/4カット、約780グラムを丸々使う。高くても100円だろう。このツナは5缶で500円しないくらい。かなり節約できる。ちなみにこれで2人分。

 レシピの詳細は『きょうの料理』をご参照いただくとして出来上がりまでをレポートしたい。

www.kyounoryouri.jp

 鍋に白菜、ツナ缶、薄口醤油、酒、水を入れる。白菜たっぷりが嬉しい。私はいつも手でちぎるので、この料理にまな板と包丁は使わない。フタをして煮ていく。

 レシピでは、中強火で10分煮たあと中身を上下返してひと煮立ち、だが、私はいつもひっくり返してからも10分、ややクタるまで煮る。この延長時間は、吹きこぼれを嫌って少し火を弱めているせいかもしれない。

 火を止め水溶き片栗粉を入れて少し煮込んでできあがり。

 ご飯にたっぷりかけていただく。白菜から出るグルタミン酸、汁ごと使ったツナ缶からのイノシン酸が合わさった濃厚なうまみがたまらない!材料2つで見た目も地味だが、とても複雑な味わいだ。熱々なのでいつも途中からはTシャツ。これがまた至福。

 ちなみに、89年の本ではツナ缶ではなく鮭缶となっていたので、魚缶ならばなんでも合いそうだ。しかし、こんなにシンプルで美味いレシピはなかなか書けないと思うし、逆を言えば、手抜きじゃないかという類の批判も予想できる昭和の空気の中で、飄々と世にこれを出すあたりにも凄まじい大物感がある。全方位的に常人には不可能な作品だ。