マイルス・デイヴィスは料理が大好きだった。ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコックらとジャズ史上最強のクインテットを結成した黄金の1960年代は、じつはマイルスにとって自炊熱中時代とも言えるようだ。
1989年の自伝『Miles』によると60年代から外食を控え料理を始め、アフロアメリカンからフレンチまで習得したそうだ。フェイバリットは『Miles's South Side Chicago Chili Mack』なるオリジナル料理。チリをパスタにかけたものらしいが、詳細不明のまま彼は帰らぬ人となった。
しかし、2007年に意外な形で全貌が明かされる。60年代を彼と共に過ごした元妻のフランシスが男性誌『Best Life』にレシピを発表したのだ。今回はこのパスタに挑んでみよう。入手しやすい材料と作りやすい分量に整えたレシピは以下の通り。
マイルス・デイヴィスのサウス・サイド・シカゴ・チリ・マック
Miles Davis’ South Side Chicago Chili Mack
【2人分】
- オリーブオイル 大1
- 玉ねぎ(粗みじん切り) 大1/2
- 合い挽肉 300g
- ★塩・胡椒
- ★ガーリックパウダー 小さじ1
- ★チリパウダー 小さじ1/2
- ★クミンシード 小さじ1/2
- ☆キドニービーンズ(水煮) 50g
- ☆水 100cc
- ☆マギーブイヨン 1かけ
- ☆赤ワイン 少々
- ☆酢 少々
- パスタ 200g
- パルメザンチーズ お好み
①フライパンにオリーブオイルを入れ中火で玉ねぎを炒める。
②合挽き肉に★の調味料を加える。玉ねぎが澄んできたら投入し炒める。
③挽肉に焼き目がついたら☆を加える。火を弱め、途中かき混ぜながら40分ほど煮込む。味見し味を整える。チリパウダーを少し足した。
④茹でたパスタを皿に盛り、③を装り、パルメザンチーズをかけ完成。
そうだ、直前にハイネケンを開けるのがマイルス流らしいです。では、いただきます。
この組み合わせでちゃんと美味しいからおもしろい。いわばチリコンカンとイタリアンのフュージョンなんだけど、トマト抜きのチリというのが珍しい。調べたら、サウス・シカゴにはトマトを使わないチリの店がいくつかあったので、ローカルチリのようだ。合わせるのがロングパスタというのもかなり変わってる。でもこれが、肉のボリューム感にとてもよく合う。チーズもチリをベースに考えるとチェダーが順当だけど、パルメジャーノにしてパスタに寄せてる。逆にチリにトマトが入ってたらイタリアン要素があり過ぎてて露骨だったかも。絶妙なバランスだと思う。
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楽しかった。調理中に何度か「これであってますかね?」とマイルス料理長の顔色をうかがう自分がいた気がしてちょっと変わった料理体験であった。